2015.8.5
指導者を指導する意義と責任
4月に東京に活動拠点を移してから力を入れているのは、後進や同業者へのS&C教育です。
NSCAが主催する講習会で行う2~3時間の実技講義では、S&Cとは何か、ウェイトトレーニングとは何か、僕が普段どのような考えを持ってS&C指導をしているのか、そして何を基礎運動として指導に取り入れているかという点を、少しでも深く受講者に理解してもらうことを目的としています。しかしながら、講習会で講師を務めるたびに、もっと多くを指導したい、そしてS&Cをより深く理解してほしい、という欲望が湧き上がって来るのも事実です。たった数時間で語りきれるほどS&Cは薄っぺらくありません。だから、講義の場で必ず受講者に伝えることは「今日得た知識や技術を指導に取り入れるのはもちろん構わない。しかし、自分が実践できないうちは決してそれを指導してはいけない」ということです。少なからず自分の体に取り入れ、それによって起こる体の変化も知り、その変化をした経験を含めて指導対象者に伝えられるまで理解した時に初めて、実際の指導に取り入れるのが指導者の責任です。ただ数時間の指導は、そこまでの心構えを、受講者に心底理解してもらうためにも短すぎます。
そこで思いついたのがS&C塾です。
実技を通して、僕が正しいと思うフォームやその裏にある理論を伝えることは当然のこと、S&C塾ではその理論を受講者が十二分に理解し、最終的には自分の体を使って美しいデモンストレーションができて、口頭でその動作の奥深くにある理論まで具体的に他者に伝えることができるレベルにまで達します。そこに至る過程には、心身にわたるかなりの疲労を伴いますが、だからこそ、そこに達した時の充実感はハンパありません。
むしろ、それだけのことをやるからこそ、「運動指導者」としての地位を築けると思うのです。
巷には、「コース終了直後に運動指導のプロになれる」的な謳い文句で受講者を募る講習会もあるようですが、僕は運動指導という仕事へのプライドと、その指導対象者の健康のことを思うと、どうしてもそれほどビジネスライクにものをとらえることができません。やはり、人様の健康に関わる今の僕の職業に誇りを持ち、高いレベルの専門知識と技術を有するからこそ、そう簡単には同業者を同業者とも認めたくない、という気概さえあります。
「なんだか偉そうなこと言って高いとこに鎮座してっけど、君だって俺の塾に入るべき人材なんだよねぇ…」と思わせてくれる人材が、この業界にはゴッソリいる状況なんです。
先述した講習会だって、数日間の講習でプロになれると謳うことができるレベルの知識しかもっていないからこそ、そんなセリフとともにビジネスを展開できてしまうのだ、という判断しか下せません。
しつこいようですが、運動指導を職にするためには、それ相当の体と脳みそと心が必要なのです。
先日僕の主催するGS Performance第1期S&C塾が終了しました。計8名の塾生が規定プログラムを修了しました。しかし彼らは、4か月にわたる塾の課程を経てなお、むしろ経たからこそ余計、もっと優れた人材になりたい、という希望を強くしました。「他人の役に立つ運動指導」というのがどのようなものなのか、その真の意味と責任を理解すると、そしてそれを常々心に抱きながら運動指導に励んでいる人材を目の当たりにすると、自分もより高みを目指し続けなければならない、という強い希望になって自己を前に進ませるモチベーションになるのだと思います。
僕としてみれば、”たった”4か月の塾で、それほどまでに運動指導者という仕事は高貴で責任あるものなのだ、ということを理解してもらったことが一番の収穫でした。
ここに第1期塾生のフィードバックがありますので、読んでみてください。彼らの高い志が伝わってきます。
僕にとっても有意義な4か月間でした。
やはり、志の高い人材の育成は本当に面白く、刺激にあふれています。
東京という場所は、本当に可能性を多く秘めた場所なのだと、再確認しました。
この分野はまだまだ捨てたもんじゃないし、今後もっともっと面白くなると思います。
第2期S&C塾が、もうすでに楽しみでしょうがありません!