2019.12.12

無報酬での取材依頼がショックだった理由

もう1か月前の話になるので、そろそろ吐き出します。

 

業界でも名が通る専門雑誌である「トレーニング・ジャーナル」から、あるトピックに関して特集を組むのでそれに関する私の立場からの話を聞きたい、という依頼が来ました。

今までも雑誌にインタビュー形式での記事作成の依頼を受けたことはあるので、今回も同じように1時間半から2時間ほどをかけてお話をさせていただいて、そこから文字になった原稿を確認する作業までが依頼の内容だな、と読みながらも推測していました。

 

しかしその依頼メールの文内には、この仕事に対して報酬は支払われない、とも書いてありました。ですので、この依頼をお受けすることができませんでした。
(ちなみに、無報酬だという事を最初のメールに記していただくことで、無益なメールのやり取りを複数回繰り返す必要がなくなるので、非常にありがたかったです。)

 

この件を受けてなぜか切なく寂しい気分にもなったので、なぜ無報酬では受けられないのか、そしてなぜ無報酬なのか、を考えてみました。

 

 

その雑誌は販売されるのです。その雑誌が売れれば売れるほど販売会社は潤うでしょう。そしておおよそすべての取材を受けた方は、自身のSNSでその雑誌の販売を宣伝する事でしょう。自身が世に出るうってつけのチャンスですので、宣伝しない方が不自然です。つまり、雑誌社にしてみればエキストラのプラス要因です。それでも雑誌社はなぜ未だに無償を貫けるのでしょうか?それは無償の仕事を受ける人がいるからです。無償で時間と知識を提供する人たちには何の得があるのでしょうか?広告料でしょうか?パブリックイメージの向上?つまりは世間からの信頼?

 

私も独立直後に無償の雑誌取材を受けたことがあります。あの時私も上記した利点が起こる可能性のために仕事を受けました。ただ、その取材が来ている時点で、私にはそれらがあったのではないか、と後日困惑することになります。というのも、その雑誌記事から私を知りそのままクライアントになる数は、おおよそゼロに等しいからです。

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ここでしっかり述べておきますが、以前雑誌markの取材を受けさせていただいたときには、しっかりと報酬をいただきました。そして面白いことに、持久系アスリート関連の記事だったので、後日持久系アスリートのクライアントが複数いらっしゃいました。無償の記事の後にクライアントはゼロで、有償の記事の後にはクライアント複数。偶然でしょうけれど、こちらとしてはやはり解せない思いが多々無償記事に残ります。

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今に至ってもですが、ブログを書くことで見知らぬ方々から徐々に知られるようになりました。そのブログという無料で得られる情報に接する人数の方が、1000円前後の値段が付いた雑誌を購入する人の数よりも確実に多いので、S&Cに興味のある方々が、私のブログで発信した情報を読む行為を継続することはあっても、その雑誌は買うことはしない、という選択肢を取ってもまったくおかしくありません。今はブログ以外にもGS PerformanceのオフィシャルサイトやnoteそしてFacebookTwitterまであるので、現時点での私自身の広報活動という観点では、雑誌の取材を受ける理由になると思えません。

パブリックイメージ、世間からの信頼、こういった点にかけても、ブログやSNSで発信する内容があれば今は十分です。自身で発信するよりも雑誌という媒体が発する方が信頼度も高いという見方もあるでしょうし、多少なりともその見方は正しいでしょう。しかし現状の私の信頼度というのは、今回の無償で依頼された仕事により世間から得ることができる信頼の大きさをはるかに超えているのではないでしょうか?少なからず、無償で受ける理由にはなりえないレベルだと思います。むしろ、今私が業界で持つ知名度そして自分で言うのもなんですが信頼が雑誌社側が私を取材対象に選んだ理由なのではないでしょうか?取材対象がSNSで知られた人材であればあるほど、雑誌の売れ行きにプラスの影響はあるはずですから。

パブリックイメージに関連していえば、発信する情報内容も重要です。今回はあるトピックが初めにあり、それに関して私なりの考えを述べるという企画だったと思うのですが、いくらインタビューを文字に起こすのは先方の作業になるとはいえ、受けた質問に対して真摯に向き合い、私なりの考えを述べるために思慮し、伝わりやすく言葉にして発するまでには、今までの経験や知識を得るための労力から始まり、その場での労力から気遣いに至るまで、無料で提供できる代物ではないです。

上記してきた理由があり、「トレーニング・ジャーナル」からせっかくいただいた依頼ではありますが、私にとってプラスがないという判断に至り、依頼をお断りさせていただきました。

 

Twitterでも、運動指導が世間で下に見られている、多くの運動指導者が無料での労働を強いられている、悪気はないにしても無料の指導を依頼される、といった苦言を目にしますが、この「トレーニング・ジャーナル」などの雑誌からの依頼は無料でしかも誇らしげに受ける方はかなり多くいらっしゃる気がします。それだけ特別な仕事の依頼なのでしょうが、やはり、それだけ威厳のある雑誌だからこそ、報酬は適度に出していただきたい。それが業界をリードする立場にある雑誌社が行う意義は大きいと信じています。逆に言えば、そのリーダーたちが報酬を出さないことが、世間の運動指導そして運動指導者に対する評価の象徴なのだと悲しく感じました。

「俺たちは身内にすら足元を見られている」という非常に惨めな気分しかないです。

その現状を変えるためにも、私は継続して精進していかなければならない、と改めて決心しました。

 

 

さてさて、世に名の知れた雑誌から無報酬で仕事の依頼が来たら、あなたならどうしますか?

 

ちなみに、もし大テレビ局から取材依頼が来たら私は無料でも受けるでしょう。広報力、パブリックイメージ、ともに雑誌やSNSを上回る数の、そして雑誌やSNSでは届きもしない層へ、訴えかけることができるはずだからです。しかも、以前S&Cコーチとしてテレビに出演したときは、私の両親がかなり喜んでくれました。あれだけ私の両親が喜んでくれるならば、少しくらい無償で仕事したって全く構わないと思わせてくれるくらい、私もうれしくなりました。

ただ、私の知識や技術をしっかりと提供しなければならないときは、無報酬では決して仕事を受けないです。それは私のためでもあり、我が業界のためでもある、と、最後にカッコつけて言っておきます。

 

 

というか、トレーニング・ジャーナル側が「こいつはタダでいいや、その程度の人材だし…」という判断により無報酬だったとしたら、このブログかなりカッコ悪いな…

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