2021.9.21

トップスイマーが説く、競技力とS&Cの関係性

GS Performanceで懸命にトレーニングに励んでくださっている、スイマーの柿添選手のTweetをもとに今回はブログを作ります。

水泳選手がS&Cコーチと共に何ができるか、そしてウェイトトレーニングを中心とした陸上トレーニングが水泳競技にどのような影響を与えていくのか、そういったことに触れます。

 

柿添選手のTweetはこれです。

この投稿の元記事の英語の情報の数部分を抜粋して日本語訳してみます。(私なりの意訳となります。)


 

Caeleb Dressel, one of the most successful swimmers in US history, isn’t just a beast in the pool. The 2020 Olympic standout—he became the fifth swimmer to win five gold medals in a single Games earlier this summer in Tokyo—trains hard in the weight room to hone the explosive power he needs to be elite.” - 最強スイマーのケイレブ・ドレセルがスゲェのはプールの中だけじゃない。1つの五輪で金メダル5個の偉業を東京五輪で達成した彼は(水泳選手として史上5人目)、群抜くスイマーになるために必要な爆発力を磨くために筋トレしてる

“Everything I do in the gym translates to being a better swimmer,” - ウェイトルームでやるトレーニング全ては水泳選手として向上するためのもの

“My lifting routine is designed to develop and maintain explosive strength off the block, so it mainly includes cleans, power cleans, jerks and snatches. I’ll usually end my power days with some box jumps and medicine ball throws to help build up my burst as well.” - 自分の筋トレメニューは、水泳の飛び込みに必要とされる爆発的な力発揮の向上と維持のためにデザインされている。主にその内容はクリーン・ジャーク・スナッチで、パワー系運動のメニューが組まれてる日はボックスジャンプやメディスンボール投げとかで締めることが多い。

“Strength training is an important part of every athlete’s training program, but for me it’s become almost like a sanctuary,” ― アスリートのトレーニングプログラムにおいて、筋トレは重要な役割があるんだけど、僕にとって筋トレってのはもはや”聖域”なんだ。(この”聖域”と表現になった理由は次の訳を読めば理解しやすい)

“it helps me develop the edge I need in a race and it’s a nice break from my work in the pool, but it’s also an opportunity to improve myself, both mentally and physically. In the gym, you get out what you put in. There’s no room for excuses, for taking shortcuts or giving half effort.”- 水泳競技力を高めるために筋トレをしているのだけど、それと同時に、筋トレは自分を水泳競技から解放してくれる時間にもなってる。そんな筋トレが、自分を精神的にも肉体的にも成長させてくれるんだ。筋トレでは、自分がやったことがそのまま自分に返ってくる。ズルしたり楽したりすれば、それ相応の結果が自分にそのまま返ってきてしまうから、筋トレはごまかしが効かないんだ。(つまり、”聖域”という表現は、筋トレという存在が、水泳競技以外で没頭できること、そして誰にも邪魔されずに現実から解放されるかけがえのない空間であること。なおかつ、弱い心が起こす妥協がそのまま結果として現れるので、決して自らを欺けない時間であると表現している←加賀の私的解釈も含む…)

なおこのサイト内の動画で、Ryan Murphyは自分にとってのS&Cトレーニングの意義について話していて、その中で下記のようなことも言っています。

“I think it’s really important for my swimming success.” - ウェイトトレーニングは水泳競技で勝つためにすごく重要。
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”One; Everything starts with the core, so being able to blaze my core and to utilize different muscle groups is very important. And also it makes me a better athlete. Becoming a better athletes outside of the water, you’re gonna be a better athlete in the water. That’s really the philosophy we have in the weight room. And it’s critical to my success and it’s going to be a part of my routine as long as I’m swimming.”- まずその理由の一つ目は、全てがコアから始まるから。コアの筋群を活発に活動させて、様々な筋群を使えるようになることが水泳では重要なんだ。そしてもう一つの理由が、ウェイトトレーニングは自分をより良いアスリートにしてくれる。陸上でより良いアスリートになれれば、水中でもより良いアスリートになれる。それがウェイトルームでの(カリフォルニア大学のS&Cプログラムでの)哲学なんだ。実際にこれは自分が水泳で勝つためには必須で、僕が泳ぎ続ける限りウェイトも続けるつもりだよ。

S&C専門家の私としては、ドレセル選手やマーフィー選手のような、水泳とウェイトトレーニング(S&Cトレーニング)の関係性は深い、と理解してくれるトップ選手たちの存在に頼もしさを覚えます。
これは水泳に限らず、多くのアスリートが、ウェイトトレーニングを中心に指導が行われるS&Cプログラムを、自身の競技とは関係のないもの、むしろネガティブに反映されてしまうもの、と信じてしまっていることが多いからです。
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彼らが述べているように、S&Cプログラムで進化させた身体能力は、彼らの競技力向上に役立ちます。むしろ、競技レベルが上がれば上がるほど、立ち向かう相手が強くなればなるほど、技術や集中力だけで勝利に近づけなくなります。そうなれば、自身のアスリートとしてのレベル、つまりは身体の強化に着手し、その進化した身体能力と共に技術を高める策を取らなければ、勝利は遠のいてしまうのです。
しかし、なぜかその事実に気づくことなく、むしろその理屈に逆行するような考え方を持ち、競技に邁進してしまうアスリートが多くいます。その発想がアスリート発信であれば、S&C指導者としても少しは我慢ができるのですが、競技指導者がそんな考えを持つことでその考えがアスリートに反映し、もっと悪い状況の場合は、アスリートはS&Cの必要性に気づきつつあるのに、そのアスリートのアイデアを思慮浅き指導者が却下する現実が、残念ながらそこらじゅうで発生しているのです。
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スポーツでは、どれだけ合理性を持って取り組むか、が実は重要です。
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単純な例を挙げれば、合理的な練習ができれば休憩時間も多く、休憩時間が多ければ回復も促進され、回復が促進されれば次の日の練習の質が上がります。そしてそれが繰り返されれば、選手たちの怪我のリスクも減り、心情におけるバーンアウトのリスクも減り、そのスポーツ文化は豊かになります。
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スポーツ科学は、その合理性のために存在している、といっても過言ではないと思っています。つまり、どれだけ勝利に向かった近道を模索できるか、がスポーツ科学なのです。そして、そのスポーツ科学の進化を図る科学者たちと実際に競技に取り組むアスリートとの媒体となるのがS&C指導者です。
科学を理解し、そして選手たちが向き合う現実(時間・授業・仕事・社会生活などなど)とも向き合い、競技に取り組む選手たちにより有効なトレーニングを提供する策を練るのがS&C指導者です。
選手たちの身体能力を向上させ、競技指導者の指導内容が選手たちの体に染み込みやすくする準備をするのがS&C指導者です。
選手たちが、競技指導者から指摘された技術をより早い期間で体現できるようになるよう準備するのもS&C指導者です。
選手たちがイメージする技術をより早く修得できるよう準備するのもS&C指導者です。
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つまり、私たちS&C指導者は、選手と競技指導者の味方なのです。
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だから、万が一選手や競技指導者が、勝利から遠ざかるような行動をとっていたら、指摘すべき立場にあるのもS&C指導者です。
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今回挙げた文章の中にも、スポーツ科学的に誤った記述は見受けられます。
例えば下の箇所がそれです。
But while the training is specifically targeted to pay off in the pool, Dressel keeps the program’s structure loose. “I really don’t have a set schedule, which is nice,” he shares. “My coach and I mostly pick workouts we feel are right for that day, though I always make sure to get in a lot of foam rolling, shoulder prehab and core work.”- 競技での勝利を目的とするために、ドレセルはトレーニングプログラムの内容をカチカチに固めないようにしている。「決められたスケジュールってのはないんだ。コーチと僕でその日に必要だと思うことを選んでやってるんだ。でもその分、フォームロールや肩の障害防止運動やコア運動はたくさんやってるよ」と教えてくれた。
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これはスポーツ科学では間違いです。「もう少しいいアイデアがある」ではなく、間違いです。
その日に必要だと思われる内容をその日ごとに選定して、もしかしたらその日の気分すら考慮して、試合での目標やそれまでの期間を考慮したうえでちゃんとプログラムを組むことなく、S&Cプログラムが行われているとするならば、時間と体力の無駄遣いです。
ドレセルのようなトップ選手ならこれでもいいのではないか、とかの観点を入れたとしても、それは間違いです。
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ただ、感染病問題の影響下にあり、どこにどんな目標を置いてトレーニングを続けるべきかが定かではないならば、そして最も重要な点は、そういったランダムなトレーニングを続けつつも、実は身体能力の維持はしっかりと果たせるようになっている、という背景があるならば、それはそれで全く構わないでしょう。
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また、私が訳を入れた箇所にも科学的に間違っているところはあります。それは、マーフィー選手の”Everything starts with the core”という発言です。これは彼の感覚としては存在しているのかもしれないし、彼がそう信じたいのかもしれないけれど、それは真実にはなりえません。
これらの勘違いや間違いがなぜ発生したかというと、アスリートは競技に取り組む専門家ではあるけれど、競技で勝つ策を見出す専門家でもなければ、身体能力を向上させる知識や技術に特化した専門家でもないということです。
(これに関しては、私が以前書いたこのブログをご確認いただけば、詳細の解説をお読みいただけます。)
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だから、競技指導者は選手たちに「どのような競技練習をして競技力を向上させるか」を明確に説き、そのアイデアを選手たちに理解させることで、目標達成を果たすために確実に同じ方向を向かせ、互いに疑問や不安があればシェアし解決し、日々の活動がより勝利に向かって直線的になるよう研磨していくことで、選手は指導者が持つ「競技力向上のための知識」を理解します。
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そしてS&Cプログラムにおいては、コーチが選手に目標と現行の課題そしてその課題の解決策をシェアし、互いに疑問や不安があればそれもシェアし、日々の活動がより勝利に向かって直線的になるよう研磨していくことで、選手は指導者が持つ「より良いアスリートになるための知識」を理解します。
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このブログで紹介した、2名のトップスイマーたちは、それらの作業をしっかりとこなすための心と体と脳みその強さを持ち合わせた人材であったということでしょう。あ
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先にも述べた「合理性」は、意外と「一般論」の裏に隠れているのです。
「今までそうだった」
「トップ選手はそれをやっている」
「あのコーチはそれをやらせている」
「そんなことやってる選手はいない」
「楽をしてはいけない」
などなど、スポーツでの成功に必要な「合理性」を引き出すためには無視しなければならないセリフが、日本のスポーツ界のあちこちに転がっています。
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まずはその「常識」を疑ってみてください。そしてまっとうな理屈を持つ指導者のセリフを探してみてください。
アスリートが指導の専門家になる必要はありません。でもアスリートだけでもできる、勝つためにやるべきことは「人と違うこと」です。
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「合理的」には今のところ、多くの人が手を付けていないですよ。
だからこそ、ライバルとの差を埋める、そしてライバルとの差を引き離すチャンスはそこにあるのです。
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ちなみに、「まずは自分で」よりも明確に合理的な方法は…
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