2025.2.26

非日常的な環境で実施する合宿に意味を持たせるには

久しぶりに書くべきことができたなぁ、と思ってPCに向かっています。

 

最近日本は総合格闘技ブームと言っていいのではないかと思っています。ただ、自分の身の回りに格闘家が多いから、私的印象の中で勝手にそう思っているのかもしれません。というのも、私の近所の方や親しい友人のほぼすべてが現在UFCで活躍する日本人を誰一人として知らないですし、それどころかUFCすら知らないということも多々あります。ただただ朝倉兄弟とブレイキングダウンの知名度が高いだけ、それに尽きるのかもしれません。それであれば早く平良選手や鶴屋選手など、世界最高峰で鎬を削る選手たちの知名度が日本国内で上がることを願うのみです。

今回のブログの内容は、そんな総合格闘家たちが最近目を向けだし実際に行動にも移しだした、海外、特に米国での短期合宿の存在意義について書きます。

 

 

現在、私が受け持つ総合格闘家2名がコロラドで合宿中です。期間は3週間半。

私はS&Cコーチとしての責務を果たすため、事前に合宿を有意義にするための指導をして彼らを送り出しました。

2名のうち1名の選手はすでにうちで数年トレーニングを行っているので、元々高かった身体能力はさらに向上して、今では近い階級の選手の中でもトップレベルの身体能力を持つ選手に育っています。そんな彼はもう片方の選手のサポートとして今回の合宿参加です。とはいえ、せっかく行くのですから後輩でもあるその選手が成長する過程を共にするとともに、自身の成長にもこの合宿期間を使ってほしい。だから、忙しい競技練習の補助としてそしてそれ以降の彼の身体能力向上を果たすために、合宿中効率よくS&Cプログラムを実施できるよう事前指導を施し、「現地についてトレーニング環境が整ったらその情報をください。それに合わせたプログラムを送るから」と伝えて合宿へ送り出しました。

もう片方の選手は現在世界の頂点を目指し研鑽中で、私のS&C指導は昨年末から始めました。それまで重量を担いでしゃがんで立ち上がったことすらない、S&Cとウェイトトレーニング初心者。それであのレベルの競技力ですから舌を巻きます。そんな彼もさすがに一級品の戦闘民族ですし、身体特性に輪をかけて優れた”成長に適したメンタリティ”を保持しているもんですから、たった2か月の間でも明確に体のサイズ感に変化を起こしています。だからこそこの合宿中も成長のチャンス。彼にも大事な競技練習の補助の立場ではあるけれど、合宿中にやるべき運動の最終確認を含めて事前指導をして合宿に送り出しました。

 

そんな彼らだからこそ、いつもの競技練習環境から離れて海外で短期合宿をする意義はしっかり理解しているだろう、私は勝手にそう期待も込めて信じていたのですが、なんだかそんなわけでもなさそうだぞ…、そんな雰囲気を感じ取ったので、先輩の方の選手に確認のために諸々と私から出せるアイデアを書き出したうえで、もう一度今回の合宿、そして今後も実施するであろう海外短期合宿の意義について考える時間を設けた方がいい、と打診してみました。

下に挙げたのが、その”私から出せるアイデア”として記した内容です。


 

やる価値のある事

競技:

  • 習得する目的をもって臨んだ技術練習に取り組む
  • そこにしかいない競技指導者からその人からしか学べない競技技術を学ぶ
  • そこにしかいない選手との実戦形式の練習から競技展開のバリエーションを学ぶ
  • 試合が数日から2週間と近い場合、試合に必要な体力を競技練習の中で培う

 

身体能力:

  • 試合が数日から2週間と近い場合、心肺機能や筋持久力の向上に特化して鍛える
  • 通常の競技練習場所に戻っても継続して取り組めるトレーニングのやり方を覚える

 

 

やる価値のない事

競技:

  • 自分の競技スタイルに理解のない競技指導者から非現実的な競技技術を学ぶ
  • 知識のない競技指導者の指導を受ける
  • 試合に向けて非現実的な選手と競技練習に取り組む

 

身体能力:

  • その時しか行わないトレーニング
  • 短期と分かっていてS&C指導依頼を受けるS&Cコーチとのトレーニング

 

認識しておくべきこと

時間と体力は有限。特に競技レベルが上がればそれらの価値は何倍にも膨れ上がる。そして日本最高峰富士山と異なり、エベレストの頂上に複数人は一緒に上がれない。世界最高峰を目指すことを許された人材は世界でも一握り。だからこそ無駄は省くべき。世界で最も合理的かつ有効な策を模索すること。無駄なことをするならその時間を栄養摂取と休息に費やすことの方が何倍も重要。

短期合宿の場が外国の場合、現地人と現地言語の存在に惑わされないこと。優秀な人材は稀。つまり、目の前に現れる全ての人が凡人。外国語を発していようが凡人の指導では世界最高峰に続かない。


 

現在世界の頂点を目指して研鑽を積んでいる選手には地元に優秀な競技コーチがいて、日常的な競技練習は彼の下で行っています。その優秀な競技コーチから離れてでも実施する合宿では、それ相当の内容を企画し実践する覚悟と準備の上で出発しないと、大事な時間にロスが出ます。そんなことは百も承知で出発したのだろうと信じてはいたのですが、現地に着いてからの情報を聞いてみると、偶然その場にあったS&C施設で偶然その施設にいたS&Cコーチの指導を受けているとのことだったので、「ん?ちょっと待てよ…まさか競技練習環境もそんな感じで選んでるんじゃないだろうね?…」と不安になって選手たちに確認することにしたんです。

***洋平心の声***
なんたってこちとら、その選手の現状と成長度合いと試合までの期間、そして提供していただいている時間を考慮の上でプログラムを企画して、最高の状態での次の試合をそしてその後の進化を迎えるために現在のプログラムを作って提供している超優秀なS&Cコーチなんすから、その辺に偶然いた俺と同じ業種の専門家だとほざく凡人にその邪魔されたくないの…だいたいね、まともなS&Cコーチなら短期の指導はその選手の時間と体力とお金を無駄にするだけだってすでに知ってるから請け負わないのよ。請け負ってる時点で選手に微塵のリスペクトも払えないエゴ丸出しのゴミヤロー、もしくは本当にその程度の常識的知識もないアマチャン

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☝☝☝

柔道に励む息子を持つ親しい仲間からの依頼。まともなS&C専門家ならこう反応します…
***洋平少しスッキリ***

で、これって先述の競技コーチも同じ想いだと思うんです。むしろ私以上にその想いは強いはず。その優秀な競技コーチの下であれば経験しなくてもいい無駄な時間と体力の消費が合宿先で起こっているとしたら、本当にゲンナリすると思います。元来、そんな優秀な競技コーチから離れて短期合宿を組むというネガティブを生むならば、そのネガティブを十二分に補うポジティブを事前にその合宿のそこら中に配置して、その合宿を実施する強い意味合いを事前に作っておくのが理想です。

結局このコンセプトを的確に理解していないと、いずれ取り返しがつかない時間と体力のロスを生み出すと危惧しています。

なんたって、登ってる山は誰もが望めば挑める富士山じゃないんだから。エベレストですよ、エベレスト!登ろうったって人を選ぶのがエベレスト!

 

もう一点、米国に行けば強くなれるなんてことはないです。漫画Slam Dunkの矢沢君のように米国に期待しすぎてはいけません。そして、英語にそして英語をしゃべる人に過剰の信頼を置いてはいけません。なんだかですね、英語を聞き取って理解しただけで、その内容が低レベルだったとしても素直に聞き入れて信じてしまうという傾向があるんです。「聞き取れた!」「理解できた!」これだけで脳みそが安心してしまうんですね。

世の中に優秀な人材って本当に少ないんです。つまり、目の前に現れるほぼすべての”専門家”は凡人です。

英語だろうが中国語だろうがスワヒリ語だろうが、踊らされないでください。その人の言ってる内容は大したことないです。その人自体が大したことないんだから。

海外で学ぶ際はその基礎概念だけは持って、”疑う”を理解の前にドカンと置いておいた方が良いです。

 

 

手段と方法。

それをしたいから、が目的なら合宿だろうが留学だろうが適当にすればいいんです。ただ目的が明確にあってその手段として合宿を組むのであれば、丁寧に企画して挑まなければなりません。

選手が選手でいられる時間は限られています。そして競技レベルが高ければ高いほど、時間も体力も徹底して大事に大事に扱ってあげないといけません。

「もったいない」の一言ですめばいいし、後悔してやり直すことができればいい、でも世の中そんな甘いもんじゃないという現実もS&Cコーチとして幾度も目撃してます。

 

 

一応言っておくと、私の選手たちの今回の合宿では下調べ等から始まる準備ができていなかった、と指摘したわけではないです。もしそういう部分が競技練習環境の中に少しでもあるようであればいい機会だから思慮してみては、と選手に提案をしたことから、じゃあ書いてみようかと思いついて出来上がったブログです。

今後彼らのように短期海外合宿を実施する選手の役に立てればいいな、と思っているわけです。

 

 

世界の頂を目指す、己の頂を高める挑戦をしている、多くのアスリートたちが可能な限り己の目標を達成できることを願っています。

最善を尽くす、これってすごく大変なことなんですよ。

だからこそ、自分の熱い想いにふさわしい優れた専門家を選別して己の挑戦を全うしてください。

これこそGS Performanceの熱い想いです。

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