2011.6.6
ウェイトトレーニング中の呼吸について
運動選手にウェイトトレーニングテクニックを指導するときには必ず、トレーニング中の呼吸法も教えます。
大事だからです。
ただ、ここで言うのはあくまでも、僕が「ファンクショナルトレーニング」と呼んでいるウェイトトレーニング中の話で、フィットネスで用いられる「バイセプス・カール」や「レッグ・エクステンション」などの、脊柱へのストレスを含まない単関節運動には当てはまらないかもしれないし、正直、それらフィットネスを目的とした運動の場合は、巷のパーソナルトレーナーの指示通り、筋肉がエキセントリック活動しているときに吸い、コンセントリック活動しているときにはどうぞガンガン息を吐きながらやっちゃってください。
今回僕が紹介するのは、体の多くの部位を含み、大きな筋肉群と脊髄にストレスをかけつつ、大きな重りを持ち上げる動き(クリーン、スナッチ、バックスクワット、デッドリフト、RDL、ランジ等)に関わる呼吸法です。
ウェイトトレーニングをするときも、スポーツ中も、基本的に呼吸法は同じです。
たとえば、バスケットボールでシュートを打っているとき、あなたの呼吸はどうなっていますか? 野球のスイングのとき? サッカーのシュートのとき? 剣道で打ち込むとき? バレーのスパイクのとき?
当然事前に息を吸い込んで、上に挙げたような、スポーツ動作の一番力が必要なときには、息は止まっています。また、そうなっていないのであるならば、あなたの呼吸法は間違っています。
ではなぜか?
人間が力をこめて何かを思いっきり行うときには、そうする必要があるから、としか言いようがありません。
息を思い切り吸って、そのままエキセントリックからコンセントリックの一番きついところ(スティッキング・ポイント)を過ぎるところまで息を止めて運動をすると下記のような利点があります。
1. 腹内に空気を満たすことにより、その空気圧が、重量物を持つことでかかる、脊柱のアラインメントの崩壊を起こしうるストレスに耐えるための補助の役目を果たす。
2. 焼肉で出てくる横隔膜(ハラミ)を含め、肋骨に付く筋肉(リブ)も筋肉であり、重量物を保持するときに腹内に空気を入れ込むことが、それら筋肉の強化につながる。結果、スポーツパフォーマンス中、または日常で大きな筋力を発揮しなければならないときに、しっかりとウェイトトレーニング時に鍛えた分の筋力が発揮される。
呼吸法の例としては、僕がこのブログの2つ前に載せた「ウェイトトレーニングをしている私」にあるビデオを参考にしてください。
また、ここでもう一点挙げなければならないのが、ウェイトトレーニング用のベルトを使用することの意味です。
上に挙げた事を考慮すれば、ウェイトトレーニングベルトをつける理由はありません。
日常的にベルトを使用している、またはスポーツ時には必ずベルトを使用している人は、そのベルトをつけたままウェイトトレーニングをする必要性は確かにあります。
しかし、日常でベルトをつけない、またはスポーツ中もベルトをつけない人がウェイトトレーニング中にベルトをつける必要はありません。
理由は簡単です。ウェイトトレーニング中にベルトをつけることで、腹部にプレッシャーがかかり、体内に入る空気量が制限され、そしてそのベルトをはずしたときでさえも、ベルトをつけたときの空気量がその人の限界となり(腹内筋力の限界になる)、結果、そのベルトの無い日常生活、またはスポーツ時には、ベルト付きのウェイトトレーニング中に鍛えられた、その「制限された」筋力が発揮されてしまうからです。
それは非常にもったいないことです。
また、ベルトが無いと危険と言う人もいるかもしれません。
しかしそれはただの錯覚です。または、ベルトを付ける習慣が精神的に抜けない、または、すでにベルト無しでは本来自分が持つ全力が出せなくなっている人の意見です。
適当なウェイトトレーニング運動を正しく行っていれば、ウェイトトレーニングが危険では無いことは、このブログで何度も言ってきています。ですから、ベルトが無いと危険と言うことは一切ありません。逆に、ベルトをつけて鍛えてしまった筋力(骨格、腹内両方)を、ベルトなしで発揮しようとしたときには、その最大筋力に体が慣れていないために、怪我を起こす危険があります。
運動中の呼吸は上に挙げた理由のため、非常に大事です。
ウェイトトレーニング中も、しっかりと自分の力を発揮するために、そして、本来自分が全力を出さなければならない場面への準備のために、正しく行わなければなりません。
ただ、心臓に疾患を持つ方には、大きな筋力を発揮する運動中での無呼吸はお勧めしません。そういう方は、しっかりと空気を体から出しつつ、出来る限りの運動をなさってください。
それ以外の方、上に書いた呼吸法を頭に入れて、今後もトレーニングに励んでください。