2013.4.8
足の裏全面でしっかりと!….?!
スクワットの教え方もいろいろあるようですが、僕はこのブログ記事にあるように教えています。
つまり、踵体重です。リンクした記事をたどっていくと、諸々の理由も説明があるので、興味ある人は読んでみてください。
で、最近巷ではこの方法とは相対して、表題にあるように「足の裏全体に体重をかけて、しっかりと地面を押して…」というようなスクワットの挙上方法を指導する方も多いようでして、閉口しています。
その理由が、「運動中にもしっかりと足の裏全面を使って地面を押すことができる体を作るため」らしく、聞こえはもっともらしいので、「スタビリティー」とか「ファンクショナル」とか「インナーマッスル」とかいう言葉を聞くとドキドキしながら信じてしまいがちな素人はガッチリとその理論を真に受けるわけですが、僕の様なプロにはどうしてもその理屈が理解できません。
人間が爆発的な力を地面に加えて、自分の体を上方に弾ませる、または前方に投げ出す場合、最後の最後に地面に触れているのはつま先です。
であるならば、その「しっかり地面を押す」という行動はつま先だけで十分でしょう。
であるならば、「足の裏全面で…」とスクワットを指導している人が、「つま先だけに体重を乗せて…」と言って指導しているならば、”逆に”僕には理が立ちます。
それにですね、人間が活動しているときには、体重は足の裏のそこらじゅうに移動するもんなんです。
なんだったら実際に歩き回ったり、サイドステップを踏んでみたり、全速力やジョギングで走ってみたりしてみればいいんです。
同じ瞬間に足の裏全面に体重が乗っていることが非常にまれでしょ?
「足の裏全面…」指導者はこれに気づいたこともないのでしょうか?・・・
だとすると不憫で仕方ありません。
このブログで何度も言っているように、ウェイトトレーニングはウェイトトレーニング。
実際に運動中や人間としての活動中に人体がとるメカニズムと、ウェイトトレーニングのメカニズムをがっちり照らし合わせること自体が愚の骨頂なんです。
あとですね、確かに足の裏全面に体重をかけてスクワットを行うほうが、僕のやり方よりも容易にスクワットを行えます。多くの人が臀部とハムストリングに十分な筋力と柔軟性がなく、逆にハムストリングのアンタゴニストである大腿筋群、つまり足の前面により強い筋力を持つ傾向にあるので、足の裏全体に体重を残せば、結局は大腿筋群メインのスクワットとなり、多くの人にとってやりやすい、心地のいいスクワットになるわけです。つまり、その方法を教える指導者にとってもそのやり方がやりやすかったということで、「足の裏全面で…」というのは結局は自分の運動テクニックにもっともらしい理由を後付しただけという場合が97.865%程度(当然面白半分の推定の数値です)でしょう。そして、それを巷のジムや大学・専門学校などの教育機関で聞き習った人はその理論を宗教的に信じてしまっているだけなんです。だって、その子たちにとってもそのやり方のほうがやりやすいのですから。
スクワットにはスクワットをやるだけの理由があって、それをやらせるにあたって、できるだけ各関節にポジティブな効能のある方法で行うというのが僕の理念です。
全てに理にかなう理論が先行していなければならないのです。
ですから、多くの人と違って、僕は「膝がつま先を出ない」というセリフを利用して指導することもありません。あれも膝関節に優しいテクニックでスクワットを行ったときにおこる作用に対する後付論です。であるならば、正しいことを正しく指導していれば、ほっておいても膝はつま先を出ないので、それをわざわざ指導の基準とすることもないということです。
「考える」ということが先行すれば、エゴからくる「やりやすさ」は極力減らすことができます。
この「やりやすさ」に理をつけても、結局はどこかで矛盾が生まれますから、運動指導者の皆さん、「考える」先行型の指導者になってください。
新年度が始まって、次の数週間は、幾人もの「新入り」にスクワットを含むトレーニングの基礎を教える時期です。いつも言うように、僕の目の前にいる運動選手にだけは損はさせない指導をするために、常に理にかなった方法で、健康的、効率的かつ効果的に、奴らをより良い運動選手にさせて行こうと思います。
以上です。