2016.6.4

P=FxVのS&C指導者としての利用方法

河森博士がこういう指摘を彼のブログでしていたので、ではS&C指導者がパワー=筋力xスピード(Power=Force x Velocity)をどのように活用して、ウェイトトレーニングの効果を競技指導者や運動選手に説明するのか、そしてS&Cスペシャリストとして自身の認識にしておくべきかを説明しておきます。

 

この業界にいると、ウェイトトレーニングをどれだけポジティブに受け入れてもらおうかという工夫をしなければなりません。特に日本国内では、大学スポーツをやる+大学が雇用したS&Cコーチがいる=ウェイトトレーニングを競技練習以外の部活動の一環として行う、という図式は成り立っていないので、基本的にスポーツ選手のS&Cへの関わり自体が薄くて仕方ありません。逆に言えば、米国にはNCAA一部リーグで活躍する機会を手に入れたスポーツ選手が大学時代にウェイトトレーニングとともに競技力を向上させる文化があり、その結果を見た他のスポーツ関係者が「やはりウェイトトレーニングをすることと競技力の向上は深い関係があるんだ…」という認識も持ちやすいので、スポーツ選手がウェイトトレーニングを行うという文化が日本の数倍根付いているといっていいでしょう。それでも、ウェイトトレーニングに対してネガティブなイメージを持つ競技指導者は未だ多数いるし、運動選手にとってはウェイトトレーニングは常にきつくてつらい身体活動であり、しかも米国の学生選手たちは日本の子達よりも「なぜ?」「どうして?」と嫌悪感丸出しで指導者に問いただしてくるので、米国でもS&Cコーチが工夫してウェイトトレーニングの重要性を説明する必要はあるのです。

そんな時に頻繁に用いるのがPower=Force x Velocityです。

どのように利用するか端的に説明すると下記のようになります

  • * スポーツはおおよそすべてがパワーである
  • * ウェイトトレーニングは筋力である
  • * 残念ながら選手たちの筋収縮スピードを大きく改善することはできない
  • * でも筋力は大きく向上させられる
  • * Forceの部分に筋力を当てはめる
  • * Velocityの部分に筋収縮スピードを当てはめる
  • * Powerの部分が向上する
  • * だから筋力を向上させるウェイトトレーニングは必要である
端的にもほどがある説明ではあるけれど、だいたいこういう感じに説明すると「なんだかそれっぽい数式も出てきたし、理が通ってるっぽい当てはめもしてもらったし、なんだかパワーの向上には筋力の向上しかなさそうだし、もうウェイトトレーニングを避ける理由も一応はないかなぁ…」っていう場所に着地しやすいです。
まぁ、端的ついでにもう少し端的に説明をしておくと、体が強くなればなるほどかつて重いと感じた重りはより軽く感じるようになります。となるとその重りを挙げるスピードも上がります。体重が変わらずに筋力が上がれば、その体を移動させるスピードは上がる。持ち上げる力も上がってその持ち上げる速度も上がるならば、その物体を持ち上げついでに発射する距離も増加するでしょう。
それでいうと、跳ぶ、走る、打つ等のスポーツ動作を行うときには筋力の向上が役に立つんじゃないでしょうか。
では、それでも納得してもらえない場合の打開策は、そのS&C指導者の知識の幅と深さ次第となります。
僕がどのように説得にあたるかというと、これこれがその例になります。
S&C指導者は常にウェイトトレーニングの弱点も知っておかなければなりません。でなければウェイトトレーニング否定人口との口論で勝てません。
トレーニングプログラム内の種目選択や数値の付け方次第では、ウェイトトレーニング自体が競技力の低下させてしまいます。だから、もしその時点で(?)な人はそこをひとまず熟考するところから始めてください。
それ以外でいうと、やはりアスリートには競技練習をやってもらってもらわないと困ります。競技練習の中で全速力や全力跳を行う。または野球のバットスイングやピッチング、バスケのレイアップ、バレーのスパイクなどなど、競技練習中に競技特有の動作を真剣に行ってもらわないと、苦労してウェイトトレーニングで筋力や柔軟性を獲得したところで競技力など向上するわけがありません。
ウェイトトレーニングの価値を伝えるための知識は、まずは心身共に自分自身で経験したうえで獲得し、しかも時間を重ねるごとにその知識の深みも増しつつ、常々頭の中に丁寧に保管していつでも使えるように磨いておかなければならない事項だと思います。
「自分のトレーニングプログラムに疑問を持ち否定しようとする人がいる」と仮定し、それを打開するシミュレーションを常々しておく危機管理能力も、S&C指導者にはしっかり保持してほしいです。
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