2018.3.13

パーソナルトレーニングのプロとしてのいくつか

GS Performanceを立ち上げ、パーソナルトレーナーとして活動し始めてから3年が経ったことをFacebookの「過去のこの日」に教わりました。

2015年の3月はまだ仙台大学の職員ではあったのですが、4月からのために3月からはGS Performanceとして懸命に広報活動をしていたので、確かに丸々3年間はGS Performanceの加賀として活動していることになりますね。

 

Long Beach Stateと仙台大学で指導していたのは当然ながら学生運動選手でした。しかも、大学レベルまでスポーツを続けられる、日米の人口の中でもかなり体を動かす才能に優れた身体たちを指導していました。
2015年の春にGS Performanceを立ち上げて活動を始めてからは、所謂”一般の方”の指導を数多く請け負う機会をいただき、それまで私が指導をしていた選手たちが、すごく”教えやすい”タイプの指導対象者であったことに気づくのです。

単純に言えば、運動神経がいいのでデモンストレーションをして見せた運動をすぐに”真似する”ことができる選手たちが多かったです。そして、私の立場も彼らの”S&Cコーチ”でしたから、できない時には「できるようになっとけ」と指示を出せば、たいていの選手たちは必死になって個人練習をして、1~2週間もあればできるようになっていました。

そういう点では、あの頃の私は運動指導者としてはかなり”甘い”環境で指導ができていたのです。その時はそのことに気づかず、今よりも自身の運動指導力に対する過信があったことを認めざるを得ません。

それくらい、大学で指導をしていた数年前と比べると、現在は運動指導に関わる引き出しの数も増え、その一つ一つの引き出しの奥深さも拡大しました。

 

東京でGS Performanceを立ち上げ、指導対象者に”一般の方”が入ってきたときに、私の運動指導においての工夫のレベルは上がりました。”上げざるを得なかった”という表現が正しいかもしれません。

今私の指導対象者となっている方々と、それまで私が大学で指導していた学生運動選手では、トレーニングをするメンタリティーが違うのです。当然、運動選手と比べれば、一般の方はそこまで切羽詰まってウェイトトレーニングをする必要がありません。

そして実際に”対私”においても立場が違いました。なんといっても、東京で私の目の前に来ていただく方々は、私の”お客様”なのです。

商業運動指導者としての私には、「お支払いいただいた指導料以上の価値のある運動指導をする」という信条があるので、当然ながらお客様に”損”をさせるということは許されないことでした。当たり前ですが、これは現在も同じです。

大学で学生を指導していた時も、運動選手たちの労力と時間だけは絶対に無駄にさせない、という覚悟をもって指導に当たっていましたが、独立してからはそこに、「お客様のお金も無駄にしない」という覚悟が加わったということです。

 

明確な理由がある指導計画・プログラム・指導キュー等々、どれも運動指導者としては当然の項目ではありますが、アスリートを指導していた時には用いなかった運動選択や強度設定など、パーソナルトレーナーとして活動し始めてからは、様々な工夫を施す必要も格段に増え、現状の自分を顧みても、アスリートを指導していた時よりも、確実に指導力が上がったという自負を持つようになりました。

失礼ながら、身体能力においてはそれまで私が指導をしていたアスリートよりも劣るクライアントの方々の指導を繰り返すことにより、アスリートの指導では得ることができなかった経験を多く積み重ね、今では、おおよそどのような方々に対しても、どのようにアプローチをすれば、必要な分だけ彼らのポケットの中に可能な限りの必須アイテムを詰め込めるのか、を理解するようになったのです。

 

端的に言えば、時間さえかければおおよそのことはどうにかなります。
しかしながら、パーソナルトレーナーとして相対するクライアントの方々に向けた運動指導では、時間の有効利用のために、アスリートの時とは比べ物にならない量と質の工夫をする必要があるのです。

 

今回は、その工夫の部分を、少しだけですが皆さんにシェアさせていただきます。

 

  1. やれないことはやらせない:当たり前なのですが、パーソナルトレーナーがエゴを持ちだしたら終わりです。「スクワットを教えたい」「ベンチプレスをやらせたい」「クリーンを取り入れたい」という欲求は運動指導に全く不要です。最も大事なことは、クライアント様のポケットの中に何が入っていないのか、に気づき、そのアイテムを一つ一つ丁寧に作成して提供していくのが運動指導です。健康を構築するために必要な柔軟性と筋力を育てることが先決であり、その前提の下で実施する運動を選択することは運動指導の基礎中の基礎です。つまりは、”手段”として各種運動が存在するのであって、それら運動をすることを”目的”としてはいけないということです。どれだけ工夫をしてもそのクライアント様ができないならば、その時点でその運動を実施するべきではありません。出来ないことでクライアント様はご自身を責めることも多いです。指導料を支払っていただいているのだから、お客様にいたずらにそんな思いをさせるのはやめましょう。
  2. プログレッションに期限を決めない:これも当然ですね。GS Performanceでは、基本的には最短でも8週間の指導期間をいただいて指導を開始します。クライアント様の数だけ目標や期待値はあるはずですが、上で記したように、出来ないものは出来ないからこそ、与えられた期間では達成できない目標も当然あります。そうなると、先述した「指導料以上の価値」を体験していただけないではないか、という危惧が出てくるのですが、目的の角度は変えたとしても、クライアント様の期待値を超える知識や実感を提供することに努めるのがパーソナルトレーナーとしての役目だと信じています。だから、「決められた指導契約期間内にスクワットができるようにしなければならない」という切迫感を持って指導することはないし、「8週間の契約期間内にジャンプ力を10㎝向上させる」といった非現実的な設定目標も持たないということです。常に現実的な目標設定をし、必要に応じてクライアント様に的確に説明をするのも仕事なのです。だからこそ、指導開始当初に、そのクライアント様が”何が出来ないのか”をともに確認・実感し、その”出来ないこと”を徐々に”出来ること”にする作業を着々と重ねるのがパーソナルトレーニング指導だと信じています。運動選択もその考えをもとに行うので、例えばGS Performanceの基礎運動の中心にあるリバースランジがどうしてもできない場合は、そのリバースランジを実施できる筋力と柔軟性をつけることから始め、徐々に以前は出来なかった動作が出来るようになり、同時に「出来る!」という実感も持てるようになり、徐々にしかし確実にご自身の成長を実感していただくことがパーソナルトレーニングでは重要だと信じています。
  3. 弱点を見抜き的確にアプローチ:できないことをやらないとは言いつつも、そればかりでは前に進むことができません。クライアント様には、各運動を実施するごとに長所と弱点を把握していただきます。特に弱点に関してはより具体的かつ的確に説明し、ご自身の癖や傾向を脳みそと体で明確に体験していただくことは非常に重要です。そして運動をしていただく際には、「気に留める」「動きづらい方に体を動かす」という”無理”をしていただきます。当然、その無理をしてくださっている間は、その無理自体が的確かどうか横に寄り添って指示を繰り返します。その無理に継続的にチャレンジしていただき、結果的に“出来るようになる”ことを経験していただくことで、次のより”大きな無理”にもチャレンジする意欲を育てていくのです。その”克服”がご自身の自信につながり、我々パーソナルトレーナーに対する信頼となるのです。その信頼があれば、継続的な指導ができる可能性も広がり、それはより長い間同じクライアント様を指導することにつながり、結果的に、より大きな身体能力の向上を達成することができるのです。
  4. 関連運動の同時進行:不得意な動作があるとして、その動作を繰り返し練習しているとしましょう。その不得意な動作を克服するために必要な筋力は、その動作でのみ鍛えられるわけではありません。当然、他の方法でも鍛えることはできます。また、その不得意な動作ができるようになった後に導入したい運動もあるはずです。また、次のステップとして存在するその運動では体の他部位も関わるとしましょう。であるならば、その不得意だからこそ練習している運動とは別に、将来的な目標を達成するために選択した運動も導入し、不得意克服につながる部位の鍛錬と、次の運動で必要となる筋力を鍛えることが時間の有効利用となります。中・長期そのプログラムを継続すれば、それらの運動により鍛えられた筋力で、不得意だった運動が実施可能になり、しかも、スムーズに次のステップにある運動の導入にもつながります。だからこそ、クライアント様も無駄に辛い思いや”出来ない”という困惑を経験をしないですむし、それが指導者の信頼にもつながります。こういうことの積み重ねはパーソナルトレーニングではすごく重要なことであるとしみじみ感じています。指導者がここで忘れてならないことは、その関連性のある運動の導入の理由を、的確にクライアント様に説明するべきだということです。すべてのプログラムに理由があるということを知っていただくことは、より強い信頼につながります。何よりも、クライアント様はその計画を体感してくださるのだから、その信頼はなおさら強いはずです。逆に言えば、的確にその”同時進行”を計画できる知識と技術を運動指導者は持っていなければならないということでもあります。「時間も体力も無駄にしてはいけない」ということです。
  5. 不安が大きければ大きいほど共有を:とはいえ、すべてをうまく次から次へとつなげられるほど、運動指導の現実は易しいものではありません。計画通りに身体能力の向上が進まなかったり、向上したことを確認したはずが、その次の週には元に戻っていたりと、思いもよらぬハプニングが多く起こるのがパーソナルトレーニングです。そんな時は、クライアント様とすべてを共有しましょう。弱点を、再度できなくなってしまった原因を、その可能性となる要因を、解決に必要な”無理”の方法を、すべて洗い出して共有しましょう。そして運動時にはご本人にも強く気にしていただきましょう。お互いの意見や思惑に食い違いがあるならば、それも解決しましょう。必要に応じて専門知識も交えて解説しましょう。そして何よりも、それができるだけの知識を保持しましょう。懸命に説明・解説したうえでも、パーソナル契約を延長・継続していただけないことになったとしても、それはそれで仕方ないではないですか。やるべきことはやりましょう。

 

運動指導とは、常に指導者と指導対象者との共同作業です。しかも、パーソナルトレーニングの場合は金銭が発生しているにもかかわらず、辛い思いをするのは常にクライアント様の方です。つまり、クライアント様の汗と筋肉痛の上に、我々運動指導者の仕事は成り立っているのです。

だからこそ、指導者はその苦痛に可能な限りの効率の良い効果をつけなければなりません。そしてその苦痛にもしっかりと納得していただけるだけの指導力をもって、常々そのクライアント様の目の前に立っていなければなりません。

お金も時間も労力も苦痛も汗も無駄にしない。それがパーソナルトレーニングの理想であり目標です。

生涯、継続教育が終わることがないのが運動指導者です。

 

ちなみに・・・

各種セミナーにおいては、他の受講者との兼ね合いもあるので、全ての参加者の身体能力にピッタリあった運動選択をすることはできません。GS Performanceのセミナーでは、全参加者の平均値またはそれより少し上にレベルを設定して運動選択をすることにしています。だからこそ、一番上のレベルにある方や一番下のレベルにある方は、「このセミナー、意味ない」または「このセミナーにはついていけない」と感じることがもしかしたらあるかもしれません。それでも可能な限りの工夫はして各種セミナーは開催していますし、ご自身以外の方へ私が指導している風景を見る機会にもなりますので、ご興味のある方はどうぞ。

また、運動指導者としての技能の向上を目的の一つとして私のパーソナルをお受けいただく方に対しては、指導の裏にある「なぜ」に関してすぐに回答を提供することはありません。一度や二度はしっかりとご自分で熟考する機会を提供させていただいた上で、その「なぜ」に関して説明をするようにしています。

 

いずれにせよ、ご自身のためだけに作られるプログラムで、GS Performanceが提供する最も効率の良い運動指導を経験できるのがパーソナルトレーニングです。ご興味のある方がいれば、こちらをご利用いただきご連絡ください。

また、GS Performanceのパーソナルトレーニングまたはセミナーを受ける前に、どのような運動を指導されるのかご興味のある方は、リバースランジRDLDLといった基本運動を紹介しているので、ご購読ください。お読みになったうえで、動作の確認をなされたい方は、パーソナルトレーニングの他にも「どう思いますか?タイム」といった少しふざけた名前のサービスもございますので、ご活用ください。

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